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黒毛和種母牛における妊娠末期の飼養管理の重要性について
- 肉牛の管理と疾病
子牛を丈夫に産ませるためには、母牛の分娩前の飼養管理が重要であるとよく耳にします。これは、産まれてくる子牛の健康状態を左右する重要なファクターの一つに、分娩前の母牛の健康状態が挙げられるからです。黒毛和種に関して言えば、子牛は小さくて弱いというイメージを持つ方が多いと思います。そこで、今回は黒毛和種において、分娩予定前2カ月間(以後、妊娠末期)の母牛の飼養管理が出生前後の子牛の健康状態やその後の生産性に影響する理由をデータを用いながら考察し、最後に丈夫な子牛を産ませるための妊娠末期の母牛の理想的な飼養管理についてお示ししたいと思います。
子牛の発育特徴と母牛の飼養管理
一般的に、胎子は分娩前2カ月で急速に大きくなります。また、黒毛和種の子牛はホルスタイン種の子牛と比較して生時体重は小さいですが、生後1カ月の成長率は非常に大きいという特徴があります(図1)。つまり、黒毛和種の場合、特に妊娠末期の母牛の栄養管理が出生前後の子牛の健康状態に大きく影響します。

妊娠末期の母牛の栄養不足により起こる可能性があること
①生後4週間までの免疫細胞に悪影響を及ぼす
②出生時体重の低下
③消化器病の増加
④妊娠期間の延長
⑤空胎日数の延長
つまり、妊娠末期の母牛の栄養不足により、成長率の高い時期の胎児の免疫力が低下し、その結果、出生後の子牛が病気にかかる確率が高くなるのです。特に、黒毛和種子牛の場合、出生直後の成長率が大きいため、出生時の低体重やこの時期の健康状態が良くないことは、その後の増体重や枝肉重量に大きく影響してしまうのです(図2・3)


妊娠末期の母牛の栄養不足を予防する方法としては、草の成分にもよりますが、分娩予定2カ月前くらいから配合飼料として1日3kgほど給与すると良いとされています。また、妊娠末期にタンパク質、エネルギー、ミネラル、ビタミンや水分をしっかり与えることで丈夫な子牛が生まれる可能性が高まります。
妊娠末期の母牛の飼育環境について
妊娠末期の母牛の栄養管理だけではなく、以下の飼育環境の維持管理も重要です。
◎分娩房は十分な面積があること。(10~20㎡程度が理想)
◎清掃や消毒がしやすいこと。
◎清潔で敷料が豊富にあること。
◎水分が十分にとれること。
増飼を実施していても、妊娠牛が摂取できていなければ意味がありません。ゆったりと休息できることも重要です。座位時は起立時よりも子宮血流量が上昇するので、胎児により多くの栄養が供給されます。
妊娠末期の栄養状態や居住環境を整えてあげることは、その後の生産性に大きく寛容します。
みなみ統括センターいぶり支所
いぶり西部家畜診療所
獣医師 川口 正人



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