情報発信

ランピースキン病の国内初の発生について

  • 牛の防疫情報

 令和6年11月、日本国内で初めてランピースキン病が発生しました。福岡県、熊本県で確認され、令和6年12月26日に1頭と発症確認を最後に、新たな発症牛は確認されていません。令和7年1月9日の遺伝子検査の結果、発症牛全頭の陰性も確認されました。この病気は、ランピースキン病ウイルスによって引き起こされる牛や水牛の病気で、家畜伝染病予防法により届出伝染病に指定されています。そこで今回は、このランピースキン病についてご説明いたします。

症状・治療について

 主な症状は、全身の皮膚に結節病変(イボ)ができ、発熱や乳量の低下がみられます。残念ながら本病に対する有効な治療法はありません。本病ウイルスは、環境中で長期間生存する可能性があり、乾燥したかさぶたで35日間、日光が当たらない環境の中で数カ月生存することが報告されています。このウイルスには、エタノールや次亜塩素酸ナトリウム、逆性石鹸等の畜産現場で用いられる一般的な多くの消毒剤が有効です。

感染経路について

 感染経路は、蚊やサシバエ、マダニなどの吸血昆虫を介して感染しますが、感染動物との接触でも感染する場合があります。なお、人に感染することはありません。搾乳牛の発症牛は、感染確認から28日経過後の血液検査により、陰性を確認した場合は生乳出荷が可能となりますが、皮膚病変にはウイルスが残留し、感染源となる可能性があるため、福岡県では陰性確認後も隔離飼育が継続されました。

感染拡大を防ぐための対策について

 日ごろの健康観察により早期発見し、発症牛の速やかな隔離・淘汰で発生源を断つことが重要ですが、牛群内に拡大してしまった場合は、速やかなワクチン接種が必要となります。福岡県では、11月21日から、発生農場の半径20km以内にある農場を対象にワクチンの接種を実施しました。ワクチンを接種した牛由来の牛肉はアメリカ向けに輸出することはできませんが、感染拡大防止のためにアフリカやヨーロッパ、アジア等の発生国でワクチン接種が推奨され、清浄化や発生数の減少が確認されています。そのため、国際獣疫事務局などの国際機関もワクチン接種を撲滅のための最も有用なツールとして推奨しています。
 韓国では、全頭へのワクチン接種以降、発生件数が大幅に減少したことも報告されています。日本国内でのランピースキン病発生の経過についてのグラフを見ても、11月21日のワクチン接種を契機として、発症頭数が減少に転じていることがわかります。

 疑わしい症状を見つけたら、速やかに隔離すると共に、獣医師または家畜保険衛生所に連絡してください。

十勝統括センター 家畜部
獣医師 高畠 大樹

家畜技術情報一覧へ