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マイコプラズマ性乳房炎について
- 牛の乳房炎
乳房炎は、主に乳房内への微生物の侵入によって引き起こされます。原因となる微生物のほとんどは細菌が占めており、その他に真菌(カビ)や藻類も原因となることがあります。今回は、細菌性乳房炎のなかでも、難治性の「マイコプラズマ」性乳房炎について紹介します。
マイコプラズマについて
マイコプラズマという名前をニュースで耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。それもそのはず、ヒトでは肺炎の原因菌として有名です。牛では、肺炎だけでなく、関節炎、中耳炎および乳房炎を引き起こします。ヒト同士、牛同士での感染力が非常に強いため、防疫には通常の細菌性乳房炎よりも注意が必要でえす。なお、マイコプラズマ性乳房炎においては、季節性の感染牛の増加は確認されていません。
マイコプラズマ性乳房炎の臨床症状
マイコプラズマ性乳房炎の特徴は、①通常の細菌検査で陰性、②泌乳量の急激な低下、③乳房の著しいしこり(写真)、④短期間で同様の症状の牛が急増することなどがあげられます。マイコプラズマは、抗生物質効きにくいことが知られているため、通常の細菌性乳房炎の治療だけでは、ミルカーを介して知らぬ間に感染牛が急増することがあります。よって、①~④の項目に当てはまる乳房炎に遭遇した場合は、獣医師に相談してみてください。

マイコプラズマ性乳房炎罹患乳房
出典:DAIRYMAN臨時創刊号テレビ・ドクター4 よくわかる乳牛の病気100選
マイコプラズマ性乳房炎の発症事例
当診療所で対策を行ったマイコプラズマ性乳房炎の発症事例をご紹介します。
発生農場はつなぎ牛舎で、乳房炎発生の際には、当診療所に乳汁検査を依頼されていました。夏頃から、乳房炎初診件数が増加し(図1)、何度検査をしても細菌が認められないものの、体細胞が高く(1000万を超える牛も)乳房に多数のしこりが認められる牛が急増しました。対策前のバルク乳体細胞数の平均は約30万/ml、生菌数の平均は約1.2万/mlまで上昇していました(図2)。
マイコプラズマ性乳房炎の集団感染を疑い検査したところ、搾乳牛全体の約25%に感染していました。農場の協力のもと、早急に隔離と淘汰を進めたところ、対策後のバルク乳平均体細胞数は訳15万/ml、生菌数は約0.2万/mlまで減少しました(図2)。


マイコプラズマ性乳房炎のへの対処・予防
マイコプラズマ性乳房炎は、感染力が非常に強く、治療の効果が得られにくいため、早期の診断と隔離や淘汰が推奨されます。診断は外部機関になりますが、バルク乳のPCR検査が迅速で有効です。300頭中に1頭でも感染牛がいれば摘発することができます。
また、定期的なバルク乳検査をすることにより、早期発見・早期清浄化が見込めます。検査を希望される際は、最寄りの診療所の獣医師にご相談ください。
みなみ西部センター
道南支所 道南南部家畜診療所
獣医師 川口 光哉



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