情報発信

小型ピロプラズマ病について

  • 牛の防疫情報

 ピロプラズマ病とは、ダニが媒介し牛に感染する病気で、原虫と呼ばれる寄生性の微生物が引き起こします。ピロプラズマ病には、大型ピロプラズマ病(バベシア病)と小型ピロプラズマ病(タイレリア病)の2種類がありますが、現在北海道では放牧牛を中心に小型ピロプラズマ病(法定伝染病ではないもの)が問題になっており、今回は小型ピロプラズマ病について詳しく説明します。

原因と症状

 タイレリア原虫が牛の体内に侵入し感染します。感染経路としてマダニの吸血が最も一般的で、感染牛を吸血したマダニが他の牛を吸血することによってうつります。また、原虫を保有しているマダニを野生動物が運ぶことも蔓延を助長します。感染後タイレリア原虫は、赤血球に寄生し貧血を引き起こすことで食欲不振や繁殖性・生産性の低下を引き起こします。一方で、感染直後に発症しないこともしばしばあり、その後のストレス要因(暑熱、輸送、分娩など)が発症を引き起こし、感染してから数か月後に重篤な貧血に陥る場合もあります。
 また、品種によっても重症度に差があり、黒毛和種など在来種では感染しても無症状が多い一方、ホルスタイン種では非常に問題となっています。

道内の発生状況

 以前より小型ピロプラズマ病発症は確認されていましたが、増加傾向にあり、近年の温暖化によるマダニの活動時期が増えたことやマダニを運ぶエゾシカの増殖によるものと考えられます。道内の広範囲の放牧地で蔓延が確認されており、9割以上の牛が感染してしまう牧野も複数存在しています。

治療

 以前はパマキンという注射薬が著効を示していましたが、現在は入手不可となり、ジミナゼン製剤(ガナゼック)が主に使用されています。ただし、一度投与した牛が症状改善後、数週間以上経って再発するという課題があります。また、搾乳牛に使用できない薬であるため、搾乳牛で発症してしまうと補液などの対症療法を長期間強いられ、乳量低下や流産などの莫大な経済損失を被る場合もあります。
 このように、一度小型ピロプラズマ病にかかると治療していても治癒するまでに時間がかかるため、予防することが非常に重要になります。

予防法

 先ほどの搾乳牛のケースでは、分娩前の未経産・乾乳期の放牧時にマダニに吸血され感染している場合がほとんどです。放牧牛での感染も含め、マダニ対策が小型ピロプラズマ病の予防に直結します。マダニは、種類によって活動時期が異なりますが、温暖化の影響で道内では南方系のマダニが多くを占めていることが知られています。
 このダニは、春と秋に活動性が上がるため、この時期に駆虫薬を使用することが重要です。駆虫薬については、マダニが牛の体に付いた時点で効果のあるフルメトリン製剤(バイチコールなど)が最も有効です。ここでは、道東方面のある診療所で行われている駆虫プログラムを紹介します。

1⃣春先から初夏(3~6月)にかけてフルメトリンを月2回投与
 冬が明け、気温が上がるとマダニは活動し始めます。効果を継続させるために2週間おきの投与が推奨されます。

2⃣夏季(7~8月)はフルメトリンを月1回投与
 気温が高くなるとマダニの活動性は落ち、感染のリスクが下がるため投与の必要性は下がります。

3⃣秋季(9~11月)にフルメトリンを月2回投与
 北海道で多くを占める南方系のマダニは、秋にも活動性が上がるため、この時期に投与頻度を上げることは非常に重要です。

 また、この他にも放牧地へ侵入する野生動物への対策や放牧地周りの下草を刈り取ることは、牛がマダニと接する機会を減らすため有効です。
 もし、小型ピロプラズマ病でお困りの場合は、先ほどの駆虫プログラムを中心に、マダニを対策することをお勧めします。

赤血球内に寄生するタイレリア(赤矢印)

みなみ東部センター
いぶり東部家畜診療所
獣医師 田中 健太郎

家畜技術情報一覧へ