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感染性角結膜炎について
- 牛の防疫情報
農場で、目ヤニや涙で目の周りが汚れている牛、結膜や白目の部分が赤い牛を見かけることがあります。これらは、角結膜炎という病気であり、外傷によるものと最近やウイルス感染によるものの、大きく2つに分けられます。症状が軽い牛は自然に治ることもありますが、放っておくと失明する可能性もある病気です。今回は感染性の角結膜炎について説明します。
角結膜炎の原因
最近感染性の角結膜炎は、モラクセラ・ボビスという菌の感染で起こることが知られており、俗にピンクアイと呼ばれています。感染は直接的な接触のほか、夏から秋にかけてはハエによる媒介が知られています。
一方、ウイルス性の角結膜炎にはウシヘルペスウイルス1型の感染によるIBR(牛伝染性鼻気管炎)という病気があり、主に冬から春先にかけて流行し、集団的に感染が広がることがあります。
角結膜炎の症状
片目または両目が感染すると、流涙、目ヤニ、まばたきの増加、結膜の腫脹充血が見られます。角膜に白い斑点が見られる場合は、角膜炎の始まりです。まぶしさや痛みで目が開けられない牛もいます。
症状が進行すると、角膜はより明確に白色化します。重症牛では、角膜に腫瘍が形成され、血管や肉芽が発達して眼球が赤色化した状態(ピンクアイ)になります。炎症が目の広範囲に及ぶと、他の微生物の2次感染を受けて視力を大きく損ないます。モラクセラが原因の場合、全身症状はほとんどありません。
原因がIBRであった場合には、上記の角結膜炎症状と同時に、発熱、発咳、腫性鼻汁等の全身症状が併せてみられることがあります。
角結膜炎の予防と治療
発症牛は、感染源となりうるため発見した場合はできるだけ隔離飼育が望ましいです。モラクセラについては、夏場の牛舎のハエ駆除やハエの忌避剤が入った耳標の装着が予防に効果的です。IBRについては、ワクチン接種により予防が期待できるほか、噴霧器による牛舎消毒も有効です。治療には、抗生物質や抗炎症薬の使用を必要とするため、獣医師に診療を依頼してください。
角結膜炎では、多くの場合多量の目ヤニが目の周囲に固着し不衛生な状態であるため、治療の前にはタオルで汚れを丁寧に拭き取り、生理食塩水などで眼洗浄を行います。目の汚染や乾燥を防ぐため、まぶたを縫い合わせる処置を行うこともあります。獣医師から点眼薬の処方を受けた際は、1日2回程度の点眼を行いましょう。
IBRによる角結膜炎であった場合には、併せて全身性感冒、肺炎の治療を行うことがあります。
角結膜炎の予後
モラクセラにより角膜潰瘍を起こした際は、視力の低下や失明の可能性があります。一方、IBRの場合には、眼病変にとどまらず肺炎へと進行する可能性があり、生命やその後の生産性に関わることがあるため、より慎重な経過観察が必要です。
ただ目の周りが汚れているだけと軽く考えず、重症化する前に早期の治療を心がけましょう。


ひがし統括センター
釧路西部支所鶴居家畜診療所
獣医師 安倉 悠



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