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初乳はとっても大切

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どうして初乳を給与する必要があるのか

牛の胎盤は、解剖学的に霊長類とは異なる構造をしているため、免疫グロブリン(lg)をはじめとした分子量の大きなタンパク質は胎盤を通過できません。
従って、子牛は出生時に免疫をもっていないことになります。そこで、牛は免疫グロブリンを豊富に含む「初乳」を飲むことで免疫(抗病力移行抗体)を獲得することができます。

初乳給与の時間と量

子牛の免疫グロブリン吸収能力は出生後徐々に低下し、生後6時間で50%、生後24時間では限りなく0%に近づくとされています。初乳給与時間の目安としては、生後4時間以内2L以上、24時間以内に4L以上と言われています。

初乳の質

一般的に「良質初乳」とはlgG濃度が50g/L以上のものとされています。これはBrix計で23%以上です。(Brix計は通販サイトで1万円以下から購入できるものもあります)

初乳の保存

適切なタイミング(できれば産後2時間以内)で初乳を搾ることができなかった場合や、母牛が乳房炎に罹患している場合などでは、改め保存しておいた初乳を給与するケースもあると思います。そのような事態に備えた保存方法は「搾った初乳を速やかに冷水で冷却し冷凍保存する」というものです。その際に使用する容器としては、ペットボトルよりもジッパー式ビニール袋に入れ少量ずつ保存した方が場所も取らず、解凍もしやすいと言われています。
解凍は、30~40℃の流水で行うことが望ましいです。熱湯を使用すると免疫グロブリンが失活してしまうので注意が必要です。
初乳管理は健康な子牛育成の第一歩であると思います。現場の方々の一助になれば幸いです。

※写真はイメージです

初乳の注意事項

生まれた子牛は初乳からでしか母牛からの免疫(抗病力移行抗体)を受け取れません。
出生後、ある程度元気になったら比重の高い初乳を飲ませましょう。1.060以上あることが理想的です。
乳房炎に感染していない初乳を給与してください。
比重計で初乳を測定することをおすすめします。「比重の高い初乳=高い免疫力」とされています。
良質初乳はジッパー式ビニール袋などに詰めて冷凍保存し、初産牛(低比重牛)や病牛(乳房炎)の場合に給与しましょう。
搾った初乳は不潔な容器、最近が増える環境での保存は行わず、適切な初乳を速やかに冷凍しましょう。
保存容器、投与する哺乳ビン、チューブ等は毎回洗浄し、ミルクの固形分を残さないようにしましょう(洗剤+熱湯)。
初乳は免疫のみならず高栄養です。確実に飲めている(飲ませている)ことを確認してください。
特に肉用牛(和牛)では子牛が母牛から直接初乳を摂取しているため、初乳の質、摂取量などが分かりません。その場合、凍結初乳や人工初乳をあらかじめ用意して対応しましょう(初乳接種不全対策)。
最近では生乳を加温殺菌(60℃30分)し、冷却する装置(パスチャライザー)も数社から販売されていますが、筆者はまだ実物にお目にかかっていません。

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北見家畜診療所
伊藤優太

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