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大腸菌性乳房炎の予防

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乳用牛の3大疾病は乳房炎、蹄病、繁殖障害とされています。今回は夏の終わりに特に発生率が上がる大腸菌性乳房炎についてお話させていただきます。甚大な被害を出しかねない大腸菌性乳房炎。皆さんどのように対策されていますか?

大腸菌性乳房炎とは?

大腸菌群の乳房内感染を原因とする乳房炎です。E.coli、klebsiella属菌によるものが多く、症状の経過によって甚急性、急性、慢性に分類されます。大腸菌性乳房炎のうち約1割が甚急性になるといわれています。甚急性になると菌の内毒素によりショックを引き起こし症状が急激に進み、泌乳の停止や、最悪の場合牛が死亡することもある疾病です。

臨床症状は?

ご存知の方も多いかと思いますが、乳房炎で①水様乳汁②耳介冷感③皮温低下④水様下痢⑤後躯蹌踉⑥起立難渋⑦食欲廃絶の主症状を呈したものは甚急性大腸菌性乳房炎であることが多いです。

甚急性乳房炎にはwarmshock、coldshockと呼ばれるステージがあります。感染の初期には乳房の熱感、腫脹、体温の上昇、心拍の増加、水様下痢を呈します(wormshock)。感染から時間が経つにつれ菌の内毒素により全身の細い血管に血栓が生じる播種性血管内凝固症候群(DIC)という病態に進行します(coldshock)。これにより脱水、耳介の冷感、体温・皮温の低下を認め、起立不能、斃死に至ります。

ショック状態に陥った牛は写真のように
眼球埋没、起立不能状態を示す

治療法は?

獣医師は原因菌に有効な抗生剤の局所または全身投与、ならびに点滴による対症療法を行います。大腸菌群に代表されるグラム陰性菌は増殖スピードが速く、急性な症状を示しやすいとされています。そのため病態の早期発見と早期に適切な対処を取ることが重症化を防ぎます。乳房に塗布する冷湿布や頻回搾乳、乳房内洗浄も有効な治療法になります。

多発時期

季節的に熱くなる時期、寒くなる時期に多発します。急激な気温の変化により牛の免疫力が低下するタイミングで発症が増加すると考えられます。また分娩直前、直後に多発します。前述のcoldshockと乳熱(分娩前後の低カルシウム血症)は症状が似ている(起立不能、水様下痢、耳介の冷感等)ため、PLテスター等を用いた鑑別が必要になります。

予防法

牛を取り巻く環境を清潔で乾燥した状態に保つこと、ストレスをかけずに適切な飼養管理のもと牛自体の免疫力の低下を防ぐことが重要です。

ワクチネーションの実施も有効な予防法になります。導入されていて効果を実感されている酪農家さんも多くいらっしゃることと思います。筆者も昨年ワクチンを導入していただいた酪農家さんで十分な効果を実感しています。しかし、日本で認可されているワクチンは種類が少ないのが現状です。

下痢症の予防を目的としたワクチンの使用により死廃率の低下が認められたという報告もあります。あくまで副次的な効果であり、効果があるとは限りませんが有効に活用することはできるかと思います。

ワクチネーションの導入、投与プログラムについてはお近くのNOSAI獣医師までご相談ください。

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