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なぜ第四胃変位は起こる?

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 牛の手術で最も多いのは、第四胃変位の手術です。第四胃変位は身近な病気ですが、そもそも、なぜ起こるのでしょうか?
 現象には必ず理由があります。今回はできるだけシンプルに解説します。

はじめに

 第四胃が正常な位置から動いてしまうのが「第四胃変位」です。位置がずれてしまうと、胃の内容の流れが阻害され、食欲不振や下痢などの症状が現れます。その原因は、単純化すると以下の3つです。

①第四胃が動くスペースがある

 おなかの中で、第四胃が動くスペースがあるからこそ、第四胃変位は起こります。妊娠中におなかの中で大きなスペースを埋めているのが妊娠子宮ですが、分娩することでこのスペースが一気に空き、第四胃の動く余地が生まれます。これが、第四胃変位が分娩後に多い原因です。特に乾乳期食い込めなかった牛は、分娩時にすでに第一胃が小さく、さらに妊娠子宮のスペースが空く、というダブルパンチで危険性が一段と高まります。
 分娩と関係のない時期でも、例えば蹄病などで十分に餌を食い込めてないことで第一胃の大きさが小さくなり、結果としておなかの中にスペースができることで第四胃変位の原因になります。

②第四胃の運動性低下と弛緩

 第四胃の運動には、カルシウムが関与しています。低カルシウム血症により、その運動性が低くなり、通常であれば送り出されるガスや内容が滞り、第四胃の弛緩(のびる)も起こります。第四胃自体が大きくなり、ガスもどんどんと滞留することで、風船が膨らんで空中に上がるように第四胃が動く原因となります。
 低カルシウム血症は分娩後に起きやすい病気で、これも分娩後に第四胃変位が多い要因のひつとです。

③ガスの発生や蓄積

 第四胃に十分に消化されていないもの、特に濃厚飼料が流れ込むことでガスが発生します。たとえば、粗飼料とのバランスで濃厚飼料が多い場合、バランスはとれているがかため食いや濃厚飼料の選び食いなどが起こる状況などです。
 たとえば足が痛くて起立や歩行がおっくうな牛は、空腹を我慢して一気にかため食いします。分離しやすい混ぜ餌であれば選び食いしてしまいます。給餌間隔が長すぎたり、餌の量が少なかったり、過密であったり、買うコンフォートが低い場合にもかため食いが起こりやすくなります。

おわりに

 このように第四胃変位は身近な病気ですが、現象は同じでも牛によって原因は千差万別です。「今、治療している第四胃変位はなぜ起こったのか?」を獣医師と話し合ってみると、次の第四胃変位を防ぐ一手が見えてくるかもしれません。
 現象には必ず理由があります。現場で「なぜ?」を考えることで「予防」につながります。

第四胃変位手術の様子(立位)

第四胃変位手術の様子(仰臥位)

オホーツク統括センター
湧別支所 佐呂間家畜診療所
大脇 茂雄

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