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牛サルモネラ症が急増

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 牛サルモネラ症の届出件数は、平成10年代もコンスタントに見られていましたが、ここ数年で爆発的に増加し、令和4年度は過去最高の発生頭数、令和5年度はさらに上回るペースで発生しています(図1)。現在はいつどの農場で発生してもおかしくない非常事態です。

図1
平成10年~令和4年全国発症頭数・戸数

なぜ増えているのか?

 明確な原因は判明していませんが、菌が抗生剤に対して耐性を獲得していること、暑熱ストレスが高まっていることが挙げられます。耐性菌に有効な抗生剤は残念ながら殆どありません。また、近年は道内でも異常な暑さが続き、9~10月に受ける寒暖差の影響が以前より顕著に見られていると考えられています(図2)。

図2
令和4年度全国月別発症頭数・戸数

なぜ対策に時間がかかる?

 症状が無くても排菌を続ける「保菌牛」が問題です。サルモネラは腸管細胞の内側へと寄生し、体内に留まり続けます。また「生きているのに培養ができない状態(VNC)」にもなるため、一度培養検査で陰性となってもぶり返すことがありますので、農場での清浄化対策に要する時間は、発生時のサルモネラ保菌牛の頭数に比例して長くなります。
 特に糞便が口から入りやすい環境であるフリーストール等では急速に感染が広がります。したがって、一頭目の発症牛を出さないこと、保菌牛を早期に摘発することが重要です。

発症牛の症状

 子牛では40℃を超える高熱、下痢(時に血便・悪臭)が見られ、治療に対する反応がとにかく悪く、あっという間に死亡することもあります。成牛では分娩後の発症が多く、子牛同様の高熱と下痢に加えて、泌乳低下・起立不能・流産等が見られます。ルーメンが未発達な子牛は、菌が腸管へと到達しやすく、成牛と比べ発症リスクが高いとされています。ただし、成牛もルーメン内環境の悪化時は、子牛同様に菌が腸管へと到達しやすいという報告があります。
 夏季に成牛に変敗したサイレージを給与することや、二番草への変更等も感染リスクを高めます。

予防法

①糞便の餌への侵入を防止
 サルモネラが持ち込まれる原因に、カラスやキツネ等の野生動物の糞が挙げられます。したがって、野生動物が餌に接触できないようにすること、そもそも餌に糞便が混入しないようにすることが重要です。夏場は餌の腐敗も早いので、混ぜた餌を早期に使うことも大事です。

②牛の健康状態を保つ
 日常の適正な飼養管理・健康状態の観察・消毒等、牛の体調を良好に保つことが基本です。加えて、生菌剤を与えて腸内細菌叢を良好に保つことや、ワクチンを接種して菌の腸への定着・増殖を抑制することが推奨されます。

オホーツク統括センター大空支所
小清水家畜診療所
獣医師 山東 駿

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